未知の世界6
消灯前、かなの部屋には就業後からずっと幸治がベッド側に座って、かなの手を強く握りしめていた。
日中は暑さが続いているが、夜になると肌寒さがまだ残っている。
一年中、同じ気温を保っている病室。
その中で何時間も高熱でうなされながら、意識が戻らないでいる。
『かな……早く戻ってこいよ。』
そう言いながら、かなの手を祈るように両手で握る。
その声に応えるように…
ピク……
とかなの指が動く。
幸治が顔を上げ、手を確認する。
ピクッ……
再び指が動いた。
『かなっ!かな!』
さらに瞼が微かに動くと、かなの目がゆっくり開いた。
『かな……。』
涙ながらにかなの名前を呼ぶ。
「こ、幸治さん……?」
かながかすり声で応える。
『あぁ、良かった。』
すぐさまナースコールでかなが意識を取り戻したと連絡を入れる。
そして、白衣のポケットから聴診器を取り出して聴診をする。
『大丈夫そうだな。』
「あれ?幸治さん……どうしたんですか?」
かなは状況が読めていないが、幸治が今に至るまでを説明すると、思い出した。
「あれ、お父さんは?」
『日中、ずっとここにいたから、今は医局で休んでる。』
と言ったものの、連絡を受けてすぐにやってきた。
『かなちゃんっ!』
勢いよく入ってきたお父さんに、かなはつい笑顔になった。
『良かった、良かった。』
すかさず席を開ける幸治の代わりに、お父さんが座り、聴診を始めた。
『うん、もう大丈夫そうだな。熱も下がってるようだし。』
「はい…。」
大丈夫でなかった時のことを思い出せないけど…。まぁ、お父さんがいいと言ってるのだから、いいんだろう。