未知の世界6
そしてアメリカ留学前日の夜。
『かな、少しいいか?』
部屋で荷物の最終確認をしているところに、孝治さんが入ってきた。
「はい。」
部屋に入ると床に座っていた私の前に、胡座をかく孝治さん。
『これ、持っていけ。』
と綺麗な包装紙に包まれた二つの箱。
「えっ!?」
見るからにプレゼントだと分かると、胸がドキドキと高鳴る。
『開けてみろ。』
言われるよりも既に手が包装紙を開いていた。
大きいプレゼントの包装紙を丁寧に広げて、蓋を開ける。
「わぁっ!!!!!」
思わず大きな声で喜んでしまった。
「聴診器っ!」
しかもワインレッド。艶感からして高級な聴診器。
首に掛けてみるととても軽い。
『耳にはめてみろ。』
そう言われて聴診器を耳に当てる。
あれ?
何かいつもと違う…。
耳の付け心地は最高。何がいつもと違うのか…。
あっ!新品なのに耳が痛くない。このフィット感はいつも使い慣れた聴診器と同じ。
『気づいたか?耳が痛くないだろ?』
「はい!でも、どうして?」
『かなが入院してるときに、勝手にかなの聴診器をかりてな。』
「えっ!?」
知らなかった。けど、そんなことはどうでもいい。
『耳の部分を型取りしてもらって作ってもらったんだ。型取りしたものより小さい形をシリコンで作って、その周りは耳の状態に合わせてフィットするように特殊なスポンジでできてるらしい。』
「へぇ〜そんなことができるなんて。
孝治さん、ありがとうございます!」
もう嬉しくって、耳に付けたついでに、自分の胸を聞いてみる。
うん、相変わらず速い。
『聴こえ方も綺麗だろ?』
「ホントだぁ。胸の音だけに集中できる。」
すごい高価なものなんだろうな。
『実は俺もアメリカに留学する前に、親父からプレゼントしてもらってな。
次は俺がかなにプレゼントする番だと思って。』
「ありがとうございます。」
聴診器は大事にしまって、もう一つの包みを開けた。
中には聴診器と同じ色をした万年筆が入っていた。
「うわぁ、素敵。」
包装紙の裏に名前を書いてみる。書き心地は最高
そして万年筆には私の名前が英語で書かれていた。
その字を指でなぞってみる。
『入院中からいつも機嫌が良さそうじゃなかったし。これで気持ちよくアメリカにも行けるだろう?』
えっ?孝治さん、私のことを気にしてくれてたの?
『これでも気分は良くないか?不安か?』
「いえ、そんなことありません!嬉しくてっ!本当にありがとうございます。」
プレゼントを手にしながら、頭を下げた。
『後な、これは言おうか言わまいか…親父と相談したんだけどな。』
「え?」
暗そうな話。
『かなの両親のことだ。』