未知の世界6
ロッカールームを出てすぐに男性陣も何人か出てきていた。
そして全員そろったところで、事務長さんが口を開いた。
『ではこれから病院長がみえますので、その挨拶が終わりましたら、それぞれ担当のドクターについてもらいます。』
言い終わるとすぐに病院長が現れた。
大きな体に強面な顔つき…ものすごい威厳を感じる。
どことなくお父さんにも似ているような。
病院長の挨拶は数秒で終わり。しかもロッカールーム前の廊下で。
さすが欧米…日本のように部屋を用意して、起立、礼で始まりかしこまった挨拶なんて一切なし。
私たちのような海外からの研修はよくあることだから、ゆっくり時間も取れないんだろうな。
と私の目の前を院長が通りかかる時…
『……かな?』
自分の名前が呼ばれた気がして前を見ると、私に向き合うように立っている院長。
院長が呼んだ?
「はい、そうです。」
『君が鈴木かな?』
「はい、今は佐藤かなですが。前は鈴木かなでした。」
『そうかい…。』
そう言いながら私の頭を大きな手でなで、
『頑張るんだよ。』
と言い残して立ち去っていった。
果たして何で院長が私をご存知なのか…思い当たることは二つ。
私の亡くなった両親を知っているのか、もしくはお父さんを知っているのか。
どちらにせよ、名前を知られているのだから、下手なことはできないんだろうな…。
頑張ろう。
次に事務長さんに連れて行かれたところは、病院一階の救命センター。
日本の病院の1階分もありそうなくらいのスペース。
そこに何十人、いや百人以上いるんだろうスタッフと患者さんなのかその家族なのか…よく分からない私服を着た人たち。
病院内の案内もなくてここに連れてこられた意味が分かった気がする。
たぶん、ここを把握するだけでも大変なことだから、他の病院施設は今日覚えることじゃないんだろうな。
前に来た時、こんなに広かったっけ…。
施設も綺麗で広くて。ただ人がごちゃごちゃしていてその辺を整理したらとても診察しやすいのに…。
『こりゃ…すごいな。』
他の日本から来た先生も、その様子に圧倒されている。