キミと私のひと夏の恋
ー工藤ー


俺は、何をやってんだ。

ちひろに突き飛ばされ、1人残された後俺の頭に、かのんちゃんの笑顔とちひろが絶望している顔が浮かんだ。

伝えなきゃ。

俺は医局を飛び出し、ちひろの病室へ向かった。



ーガラガラ


「お前らに話ときたいことがある。」

ちひろ「今更なんだよ」

「あの日…かのんちゃんが飛び降りた日。俺は彼女が飛び降りる直前まで電話していた。」

ちひろ「はあっ?!」

「その電話でかのんちゃんは、俺に言ったんだ。工藤さん。お願いします。その時は、よろしくお願いします。って…そして、かのんちゃんは、一方的に電話を切った。」

ちひろ「なんだよ、それ…」

「そして、電話を切ってから20分後には、この病院に運ばれて来た。最初はびっくりしたよ。まさか、自殺を図るなんて思っていなかったからな。。。」

ちひろ「…」

「かのんちゃんがこの病院着いた頃には既に心肺停止だった。その後なんとか再開したけど…戻るまでに時間がかかりすぎた…。かのんちゃんは植物状態になり、脳死判定された…。そして、看護師からこれを受け取った。」


俺は、ちひろに血まみれの1枚のカードを手渡した。


ちひろ「これ…」

「そうだ。ドナー登録カード。かのんちゃんは、生前俺に言ってた。私の心臓ちひろ以外にあげないでって…。」

ちひろ「なんだよそれ…」

「でも、それは約束は出来なかった。決めるのは俺じゃないから。でもな、奇跡が起きたんだよ。ちひろ。お前が、かのんちゃんの心臓を貰う順位が1番だったんだよ。」

ちひろ「嘘だろ…」

「だから、何としてでもかのんちゃんの心臓をちひろに移植したかった。」

ちひろ「なんで…なんでそん時教えてくれなかったんだよ…」

「ドナーの情報は、原則教えられない。それともう1つ…その事を話したらお前は受けないと思ったから…」

ちひろ「分かってんじゃねーかよ…俺は…俺は!!かのんの命を奪ってまでいきたくなかったっ!!!!!」

「それは違う。ちひろが奪ったわけじゃない。よく考えてみろ。あのビルの高さから飛び降りたら心破裂していてもおかしくない。いや。むしろ心破裂していない方がおかしいくらいだ。」

ちひろ「何が言いたい」

「運ばれて来たかのんちゃんの身体はボロボロだった。大半の臓器が傷付いていたんだ。でもな、心臓だけは無事だったんだよ。かのんちゃんが、お前のために守ったんだ。その証拠に自殺したにも関わらず、両腕に酷い傷があり、うずくまって倒れてたそうだ。普通飛び降り自殺した人はうつ伏せか仰向けになって倒れてる。腕はかすり傷程度だ。でも、かのんちゃんは違った。その意味わかるよな?」


俺はちひろに畳み掛けた。


「ちひろ。かのんちゃんの想い受け止めてやってくれ。」


俺は必死に伝えた。


ちひろ「くそーーーーーー」


病室内にちひろの叫び声が、虚しく響き渡った…

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