恋じゃない愛じゃない
変わったお客様
「やわらかくて甘い淡路島の玉ねぎスライスです。どうぞー」
サラダバーの欠品確認・補充と、トングの交換は定期的に行う。サラダバーは、サラダバーのみ注文だと400円で、ほかの食事とセットで注文すると300円になるので、日々の野菜不足を気にする人や先に野菜でお腹いっぱいにしてからメインを待つというダイエッターにとっても人気のメニュー。メインは、レタス、きゅうり、ビーンズミックス、オニオンスライス、ミニトマト、オクラ、コーン、ポテトサラダ、海藻サラダなどで、フルーツ、ゼリー、マンゴープリン、杏仁豆腐などのデザートも含まれ、ドレッシングが3種類、黒ゴマシーザー、焙煎ごま、おろし醤油。トッピングが、粉チーズ、クルトン、カリカリベーコン。
香の物は、おみ漬け、梅干し、唐辛子味噌、赤かぶ漬け、青菜漬けの中から日替わりで2種が出される。
オーダーを待たせている人はいないか、なにか言いたげに困って、視線をこちらへおくってくる人はいないか、お冷やは十分に足りているか、店内を見回す。
陽央くんが子連れ夫婦と思われるテーブルのオーダーをとっていた。
「お子様は何歳ですか?」
「7ヶ月です」
「では、ドリンクバーは3歳まで無料なので、一応注文に打っておきますね。果汁100パーセントのリンゴジュースなら飲めると思うので、よかったら飲ませてあげてください。先に味見をしてあげて濃度が濃いようであれば、白湯もポットにあるので2、3倍に薄めてあげられますよ」
夫婦は笑顔でありがとうございますと言い、子供によかったねぇ、と語りかけている。
陽央くんはそのほかに、付け合せの変更、苦手やアレルギーについても聞いていた。彼が人気の理由はけして顔だけではなく、こういう何気ないが、気配りが出来るところだ。小さな気配りはやがて大きな信頼に繋がる。
陽央くんは、さりげない笑顔をひとつ置いて、去っていく。
わたしもホールにお辞儀をして仕事へと戻る。
お客様が触るトングは頻繁に交換し、厨房の手を洗う石鹸は直接手を触れずに泡が出てくるシステム。爪を洗うブラシは従業員1人1人専用のものが用意されている。
キッチンの仕事はまず大きくわけて、2つ。
1つは、洗浄と言ってお店で使って汚れた全て、スプーンや箸なども含んだ、食器を業務用の洗浄器を使って洗う仕事。もう1つは、実際に入ってくる伝票を見ながら順番通りに料理を作る仕事。
洗浄では、汚れの落ちにくいものはシンクのお湯に浸け、ある程度スポンジでこすり、それ以外のものはお湯で軽くすすいだあと、正方形の箱にひっくり返して並べ、洗浄機に入れる。洗い終わった合図である音がしたらそれらを取り出して、透明のプラスチックの箱の中に同じ種類の食器を重ねて置いていく。ひたすらこの繰り返しの作業。入りたてで忙しいときは、ずっとこの皿洗いを6時間やった結果、手がカッサカサになってしまった。
それに比べれば、仕事のわからなかった最初の頃でも料理を作るほうがそれなりに楽しい。海鮮丼や、揚げ物などを作ったりする。海鮮丼の場合は、ご飯を平らに均したあとマグロやサーモン、ホタテなどの具材をそれぞれのせていく。揚げ物の場合は、フライヤーにフライドポテト、ヒレカツ、えびフライ、ロースカツ、フライドチキンなどを入れて、揚がったらお皿に盛りつける。
最近の飲食店のメニューは多い。カテゴリーも、前菜、サラダ、焼き物、揚げ物、煮物、食事物(ご飯・麺類)、デザートと多岐にわたる。
とくに食べ方や、提供方法(配膳の仕方)などにルールや制限があって、わたしのお店では、新人さんに運んでもらう商品には制限をかけている。必ずデシャップ(配膳の指揮官)担当などに、説明させながら運んでもらう。
それでも、たまに事故は起こる。例えば、卓上でコンロで焼く生肉の商品を、お皿に生肉がのっかているだけの状態で運んでしまったり、コンロは持って行ったけれど、ゴトク(鍋をのせるところ)が裏返っていて提供後にテーブルで煙が出ていたり。そんな事故を防ぐ為に、はじめて運ぶ商品などは必ず誰かに聞いてから運んでもらうか、先輩のあとをついて来てもらうようにしている。
サラダバーの欠品確認・補充と、トングの交換は定期的に行う。サラダバーは、サラダバーのみ注文だと400円で、ほかの食事とセットで注文すると300円になるので、日々の野菜不足を気にする人や先に野菜でお腹いっぱいにしてからメインを待つというダイエッターにとっても人気のメニュー。メインは、レタス、きゅうり、ビーンズミックス、オニオンスライス、ミニトマト、オクラ、コーン、ポテトサラダ、海藻サラダなどで、フルーツ、ゼリー、マンゴープリン、杏仁豆腐などのデザートも含まれ、ドレッシングが3種類、黒ゴマシーザー、焙煎ごま、おろし醤油。トッピングが、粉チーズ、クルトン、カリカリベーコン。
香の物は、おみ漬け、梅干し、唐辛子味噌、赤かぶ漬け、青菜漬けの中から日替わりで2種が出される。
オーダーを待たせている人はいないか、なにか言いたげに困って、視線をこちらへおくってくる人はいないか、お冷やは十分に足りているか、店内を見回す。
陽央くんが子連れ夫婦と思われるテーブルのオーダーをとっていた。
「お子様は何歳ですか?」
「7ヶ月です」
「では、ドリンクバーは3歳まで無料なので、一応注文に打っておきますね。果汁100パーセントのリンゴジュースなら飲めると思うので、よかったら飲ませてあげてください。先に味見をしてあげて濃度が濃いようであれば、白湯もポットにあるので2、3倍に薄めてあげられますよ」
夫婦は笑顔でありがとうございますと言い、子供によかったねぇ、と語りかけている。
陽央くんはそのほかに、付け合せの変更、苦手やアレルギーについても聞いていた。彼が人気の理由はけして顔だけではなく、こういう何気ないが、気配りが出来るところだ。小さな気配りはやがて大きな信頼に繋がる。
陽央くんは、さりげない笑顔をひとつ置いて、去っていく。
わたしもホールにお辞儀をして仕事へと戻る。
お客様が触るトングは頻繁に交換し、厨房の手を洗う石鹸は直接手を触れずに泡が出てくるシステム。爪を洗うブラシは従業員1人1人専用のものが用意されている。
キッチンの仕事はまず大きくわけて、2つ。
1つは、洗浄と言ってお店で使って汚れた全て、スプーンや箸なども含んだ、食器を業務用の洗浄器を使って洗う仕事。もう1つは、実際に入ってくる伝票を見ながら順番通りに料理を作る仕事。
洗浄では、汚れの落ちにくいものはシンクのお湯に浸け、ある程度スポンジでこすり、それ以外のものはお湯で軽くすすいだあと、正方形の箱にひっくり返して並べ、洗浄機に入れる。洗い終わった合図である音がしたらそれらを取り出して、透明のプラスチックの箱の中に同じ種類の食器を重ねて置いていく。ひたすらこの繰り返しの作業。入りたてで忙しいときは、ずっとこの皿洗いを6時間やった結果、手がカッサカサになってしまった。
それに比べれば、仕事のわからなかった最初の頃でも料理を作るほうがそれなりに楽しい。海鮮丼や、揚げ物などを作ったりする。海鮮丼の場合は、ご飯を平らに均したあとマグロやサーモン、ホタテなどの具材をそれぞれのせていく。揚げ物の場合は、フライヤーにフライドポテト、ヒレカツ、えびフライ、ロースカツ、フライドチキンなどを入れて、揚がったらお皿に盛りつける。
最近の飲食店のメニューは多い。カテゴリーも、前菜、サラダ、焼き物、揚げ物、煮物、食事物(ご飯・麺類)、デザートと多岐にわたる。
とくに食べ方や、提供方法(配膳の仕方)などにルールや制限があって、わたしのお店では、新人さんに運んでもらう商品には制限をかけている。必ずデシャップ(配膳の指揮官)担当などに、説明させながら運んでもらう。
それでも、たまに事故は起こる。例えば、卓上でコンロで焼く生肉の商品を、お皿に生肉がのっかているだけの状態で運んでしまったり、コンロは持って行ったけれど、ゴトク(鍋をのせるところ)が裏返っていて提供後にテーブルで煙が出ていたり。そんな事故を防ぐ為に、はじめて運ぶ商品などは必ず誰かに聞いてから運んでもらうか、先輩のあとをついて来てもらうようにしている。