濃密に溶かしてあげる
歩み寄るために
彼は靴を履くと、ドアノブに手をかけながら、
振り向かずに言った

「俺が愛してるのは杏だけだ。」

ーバタンー

ドアが締まると同時に私はその場にしゃがみ込んだ

ポタポタと床に落ちる水滴

子供のように泣きじゃくった

素直になれない自分を責めた

飛び込む勇気がない自分を嘲笑った

一番バカなのは私。

だけど、今更どうにも出来ないじゃない。

彼はもう結婚する身。

私が好きだと言ったところで、どうなるものでもない

それなら言わない方がいい。

結局は保身のためだ

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