ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~
紗奈はもともと俺の客だった。彼女は毎日のように依頼してきた。それもあって、俺と紗奈はいつの間にか本当のカップルみたいに仲良くなった。俺にとって紗奈は一緒にいるのが一番心地良い客だったし、紗奈も俺を好いてくれていたんだと思う。あの日までは。
中3の冬のある日、客と喧嘩してお金を貰ってこれなかったせいで父親に殴られ家を追い出された俺は、道端で紗奈に会った。
「陽太……?どうしたのそれ!殴られたの?」
紗奈が血で滲んでる俺の頬を触って、大きな声を出して言う。
「……あんたには関係ねぇだろ」
殴られたせいでイライラしてた俺は、そう八つ当たりするみたいに言った。
「関係あるよ!私、陽太のこと心配だもん!!」
紗奈が俺の肩を揺さぶって叫ぶ。
思えば、客なのにここで話してしまったのが、間違いだったんだと思う。
「……親父に殴られたんだよ」
金を稼ぐための道具だとしか思われていない環境が嫌すぎて、客に話したってどうしようもないってわかってるくせに、言いたくなってしまった。
きっとそれが更なる地獄への幕開けだった。彼女がずっと何も知らない客でいてくれれば、それでよかったのに。