ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~
……大学ね。
俺、大学行きたいのかなあ。
急に言われても、答えなんか出ない。……だってずっと行けないものだと思ってたし。しかも二十歳で大学ってことは、二浪だと思われるんじゃないのか? それは嫌だなぁ。
でもそれが嫌だからって、LOVEのこととか虐待のことを話す気にもならないし、同級生に年齢を聞かれたら、一体どうやって話せばいいんだろう。
その前に大学の勉強についていけるのかって感じだけど。高校の卒業資格とって以来ぜんぜん勉強してないし。
それに何より、俺は大学で人付き合いを上手くやっていく自信がない。……LOVEを知ってる奴がいたらって思うと、大学で友達を作るのすら億劫になってしまう気がする。
「そろそろ昼ご飯でも作るか。翼咲、手伝って」
「ん」
翼咲と一緒にキッチンに行こうとしてる光輝に、俺は声をかけた。
「光輝、ベランダいてい?」
「別にいいですけど、もしかして煙草ですか?」
「だったら何?」
「もう、自分のこと大切にしてって言ったそばから! 煙草はダメです」
「……お前も吸ってるくせに」
俺がそう言うと、光輝はあかさらまに頬をかいた。
「あれ、気づいちゃいました?」
「ああ。お前、服から煙草の匂いする」
嘘だ。煙草の匂いなんてしてない。
「え、今日はまだ吸ってないのに」
「ハッ、嘘だよ。今のはったり。でもやっぱり、吸ってたんだな」
「え、じゃあなんで吸ってるの分かったんですか」
「ただの憶測。翼咲が光輝も人に頼ることが出来ないって言ってたから。そういう奴、煙草吸いがちだろ」
「確かにそうかもしれませんね。いっ!?」
翼咲が光輝の足の脛を蹴った。
「バカ光輝。いい加減吸うのやめろ」
「うわっ、光にぃ大丈夫?」
妖斗が心配そうに言う。
「ああ。ごめん、悪かったって。そんな怒んなよ」
「……ハハ、光輝が弟みてぇ」
こんなふうにふざけ合える関係って、本当に羨ましい。
「……紅葉さん、あの、翔太さんのこと嫌いにならないでくださいね。言い方はぶっきらぼうかもしれませけど、翔太さんは紅葉さんのことを思って言ってますから」
俺を見ながら、ためらいがちに光輝は言う。
「わかってる。……しかし、親が親なら、子も子だなぁ。お前と翔太さん、よく似てるよ。本当に」
「え、似てますかね?」
「ああ、そっくりだよ。まぁ人間不信なとこを除いて、な。じゃあ俺は光輝の部屋にいるから、飯できたら呼んで」
「紅葉さん、煙草」
「え? あー、はい。お前も、光輝に負けず劣らずの世話焼きだなぁ」
そういって、俺は翼咲に煙草を手渡す。
「え、そうっすか? 俺はただ自己犠牲が嫌いなだけっすよ。自殺未遂したことあるんで、自分を大切にしなかったらどうなるか、この中で一番よく分かってますから」
ものすごい説得力のある言葉が返ってきた。
翼咲の腕が目に留まる。服の袖口から手術跡がガッツリ見えた。