ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~
「真凛、ごめん。あの、マフラーなんだけど……」
「ああ、知ってるよ。利亜がとったんでしょ? 気にしてないよ。ごめんね? 取り返そうとも思ったんだけど、喰蝶が触ったのを妖斗が使い続けるのを想像したら、とても取り返す気になれなくて」
確かに、それを考えると取り返す気にはなれないよな。
「……いや、謝る必要なんてない。むしろありがとう。取り返さないでくれて」
元は真凛がくれたものでも、喰蝶が触ったって考えただけで、捨てたくなってしまう気がした。
「ううん。私が、取り返したくなかっただけだから。ね、妖斗、今度ショッピング行こう。私、今年の冬までに、妖斗の新しいマフラー探しに行きたいの」
「……あ、ありがとう。うん、行こう」
頬が赤くなる。デートの誘いを受けてしまった。初デートはショッピングか。
「妖斗!え、……お、お前らやっと付き合ったのか
よ?」
真凛と手を繋いで教室に戻ってきた俺を見て、翼にぃは言う。
「付き合うの遅すぎじゃね?」
翼にぃの隣にいる朔が呆れ半分に言う。
「……色々あったんだよ」
兄さんのこととか、利亜のこととか、紅にぃのこととか。
「……たしかに色々ありすぎたな」
眉間に皺を寄せて、翼にぃは言う。
「妖斗、彼女が出来たからって家のこと疎かにすんなよ。兄さんはそうしても怒らなそうだけど、俺や光輝は怒るからな。それに今は、妖斗には悪いけど、兄さんより、紅葉兄さんのことを優先してくれよ。……紅葉兄さんは、光輝よりくせものだ。自分のことを嫌いすぎている」
確かに。
紅にぃは本当にとことん、自分が嫌いだよな。
「紅葉兄さんって?」
「ああ、真凛には言ってなかったっけ。俺が務めたホストの店に、高校生の時からホストクラブで働いてた人がいて。その人を、家族として迎え入れたんだよ」
「はぁ? 高校でホスト?」
朔が声を上げる。
キャバ嬢の子供だから、こういうのには食い付きがいいらしい。
まぁ「高校生の時からホストをしている人がいる」なんて、キャバ嬢の子供だろうとそうじゃなかろうと、興味が湧く話だろうけど。