ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~

「……俺、副総長ならないよ」

 小声で、俺は言う。

「兄さんが総長やらないなら、副総長にはならない」

「……そっか。妖斗が副総長になりたかったのは、兄さんとの約束があったからだもんな」

 俺の頭を撫でて、翼にぃは目を伏せる。

「うん」

 兄さんが総長にならないなら、俺も副総長にならなくていい。

 あの約束は、二人が幹部になって初めて叶うものだから。

「朔乃はどうする?」

「うーん。俺だけ副総長目指すのもなんかなぁ。まぁ俺多分翼咲と違って受験しないから、なってもいんだけど」

「朔乃大学行かねぇの?」

 翼にぃが首を傾げる。

「ああ、そのつもり」

「……もしかして」

 翼にぃが小さな声で確認する。

「うん。俺が大学行ったら、母さんが夜の仕事俺が卒業するまで続けないとだから。それなら俺が働いて、少しでも母さんの負担減らせたらなと思って。その方が母さんに会える時間も増えると思うし」

「そっか。確かに会える時間が増えるなら、その方がいいな」

 翼にぃが朔の頭をふわふわと撫でる。

「ああ。母親に会う時間を増やすために就職するなんて、マザコンみたいだけどな」

 頭をかいて、自虐するみたいに朔はいう。

「朔、……多分、それは違う」

「ああ、違うな」

 俺の言葉に頷いて、翼にぃは笑う。

「朔乃は、母親が借金のせいで自分と一緒にいれなくなってたから、大人になっても母親と一緒いたいって思ったんだろ。それは普通のことだ。別にマザコンじゃない。子供なら当然だ」

「うん、うんっ。ありがとう」

 翼にぃの言葉に何度も頷いてる朔を見ながら、羨ましぃなぁって思った。

 朔はいいなぁ、母さんがいて。

 母さんに、会いたい。父さんにも、会いたい。母さんや父さんに、兄さんの身体のこと相談したいな。

 翼にぃや、光にぃや紅にぃに相談するのももちろんいいんだけど、大人にも、相談してみたい。

 病院では平気そうに見えたけど、本当に平気かわからないから。

 俺の願いは、自分が幸せになることじゃない。

 俺の願いは、真凛と一生一緒にいることじゃない。

 じゃあ一緒にいたくないのかと聞かれたらそれは違うけど、でも、真凛と一生一緒にいることが願いなわけではないんだ。

 俺の願いは、兄さんがいつまでも笑って、元気に過ごしてくれること。

 たったそれだけなのに、どうして兄さんはいつも、倒れちゃうんだろう。

 目覚めるまでに時間がかかりすぎて、身体が弱っちゃったのかな。

 俺は、兄さんが元気でいてくれたら、それだけで明日も明後日も生きていられるのに。
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