ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~
神様、叶うなら。
「……いいから、逃げ「くれはぁ!!」
その声を聞いた瞬間、世界の崩れる音が聞こえた気がした。
洗面所に入ってきた美桜さんは、カッターを持っていた。
美桜さんは紅葉さんの肩を押して、思いっきり壁に押し付けた。そして、カッターで、紅葉さんの髪を切り裂いた。
「みっ、みお……」
「なぁ紅葉、俺、お前雇った時言ったよなぁ? 裏切ったら許さないって」
美桜さんが肩を掴む力を強めたのか、紅葉さんは、痛そうに顔を歪めた。
「いたっ!……別に、俺は辞めないんだから、問題ないだろ」
「そう言うことを聞いてんじゃねぇんだよ。じゃあ、お前が妖斗の代わりに俺の犬にでもなってくれんの?」
「なるわけないだ…ぐっ!?」
美桜さんはカッターの刃をしまうと、それを持っていた手で思いっきり紅葉さんの腹を殴った。
「紅葉さんっ!?」
「ゴホッ、ゴホ。……逃げろ、妖斗。今すぐに!!」
頼りげのないかすれた声を上げて、紅葉さんは言った。
いや、ここで、……逃げちゃダメだろ。
逃げろって言われたからって本当に逃げたら、母さん達が死んだあの時と同じだ!!
「……すみませんっ!!」
俺は震えながらも、洗面所のそばにあった棚からドライヤーを出し、それで、美桜さんの頭を思いっきり叩いた。