ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~
 
 無精子症。意味はその名の通り、子供が出来ない身体ということだ。いや、正確には女性に子供を産ませることが出来ないと言うべきか。

 要は簡単に言ってしまえば、紅葉さんは『女を妊娠させること』ができないらしい。


「だから、俺といて女に子供ができる可能性は、すんごい低いよ。つーか、無い。0パーセントだ。

俺高1の時に初めてちゃんとした彼女ができたんだけど、その子が俺が虐待から逃れるために子供を作ろうって言ってくれて。それなのに親父のせいで無精子症になったのが発覚して、それで彼女とも別れて、荒れに荒れてさ。

何もかもどうでもよくなって、レンタル彼氏の仕事無断でサボって煙草とか吸って適当に夜を明かすようになったんだよね。

そしたら、再会した直後、金を稼げない俺はゴミ屑だっつって、父親は俺を捨てた。背中を服ごと包丁でばつ印に裂いて、道端に」

紅葉さんは随分と平坦に喋った。

それはまるで、辛くもなんとも無いよって、自分に言い聞かせているかのように。

「……それを一番最初に見つけたのが美桜。死にかけてた俺を拾って、俺が病院に行きたくないっていたら、元医者のホストに手当を頼み込んでくれて、俺をここまで育てた」

わかってしまった。嫌になるほどに。

この人は比喩なんかではなく、本当にやったり、デートをしたりすることでしか金を貰ったことがない。


そういうことだけを教わって、生きてきてしまったんだ。

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