ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~
父親に捨てられた俺は、いつも美桜の家で暇を持て余していた。
背中の傷が治って学校に通えるようになっても、通う気になれなかったから。
美桜はそんな俺を、通信制の高校に通わせてくれた。
学費もそんなに高くないところで、それは、人と話したくない俺にピッタリな学校だった。
「ただいまー」
そう言って美桜が帰ってくるのは、いつも夜中。俺はそれを毎日起きて待っていた。
恥ずかしいことに、当時の俺はレンタル彼氏をしてた時に誰かと寝るのが当たり前になっていたせいで、一人で寝れなくなっていた。
「……紅葉?」
美桜はいつも名前を呼んで、俺がいる部屋のドアをノックした。
紅葉と呼ばれるのが、俺は大好きだった。
暮月陽太。俺を捨てた親父と母親に付けられたその名前が、心底嫌いだった。
紅葉は暮れるを紅にかえて、陽を葉っぱに変えただけだ。そこに意味なんてない。
でもそれで良かった。親父や母親にはもう二度と名前を呼ばれずに済むと実感出来て、安心したから。