先生、あのね。(短編集)

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はじめての駅の××

新宿駅の込み合う人のなか、一人ドキドキしながら待っていた。
普段は先生が車でお迎えなのだが今日は出張帰りらしく初めて駅での待ち合わせなのだ。
イヤホンから流れる軽快な音楽に乗りながら先生が来るのを待っていた。
普段は聞かない吹奏楽の曲だ。先生が吹奏楽をやっていたのもあり勝手に感化され、聞いてる。
ピアノはやっていたことがありある程度はわかるのだが金管楽器はどの音がどの楽器なのかさっぱりだ。
「おまたせ。」
不意に頭を捕まれ、上を見上げるとスーツ姿の先生がいた。
普段は私服だからいつもと違う姿に少しドキッとしたのを隠そうとして噛んだ。
「まて…まちました!」
「すまん。仕事がちょっと長引いて。」
といいながら頭をグリグリされる。
やめてくださいよ、と口では言うもののこういった子供扱いも案外悪くはないと思っている。
高校に上がってから色々あり常に大人でいることを意識していた理央にとっては子供でいれる場所というのは自分で思っていたよりも求めていたらしい。

「今日どこ行きます?」
「ラーメンと言いたいがあいにく明日も仕事だからそういうのに響かないところで。」
「うーん。じゃあここなんかどうですか?気になってる店なんですけど。」
そう言って事前にリストアップしていたお店を見せる。
「新宿 デート ディナー」で検索をかけて口コミがよかったところだ。
そういう場所につれてって何となくそんな空気にしたいのだ。
"気になっていた"何てただの口実に過ぎない。
「でもここ、カップル向けじゃないか?」
痛いところを突かれた。
「でも私たちも黙ってれば場違いじゃないですよ!」
「お前が黙ってるなんて無理だろ。絶対外じゃ先生って言うなよ?」
「いや、そうかもだけど、できるかも?ってか笑うのひどくないですか!?それに最近は外では呼んでません!」
思惑がばれないよういきたいアピールをする。
「まあいいか。これ東口か?」
どうやら成功したようだ。
心のなかでガッツポーズをした。
お店につくと落ち着いた雰囲気で軽く見ただけでもカップルがちらほらいた。
「いらっしゃいませ。」
店員さんに人数を伝え席に通してもらう。
店内はパスタのいい匂いでみたされていた。
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