甘いものには毒を
中越亜美菜、千綿健
「健ー、早く早く!」
「亜美菜、少し待てよ」
若い二人は学校帰りに街へ出て来て熱々にデートを重ねていた。
付き合ってまだ日は浅いが、誰が見ても仲が良く、寄り添って歩いている。
そこに一つの店のガラスを覗けるば可愛らしいクマ仕立てで周りに天使が飾られているチョコレートでできた教会が置かれていた。
「わー、これ可愛いね」
「たく、亜美菜は本当にこう言うの好きだなま」
隣ではしゃいでいる彼女を微笑しながら見つめる。
いつか二人にもこんな至福な時がくるのだろうかと思い描いて行く。
「ね、次行こう、次ー!」
數十分二人で眺めていると、隣にいる彼女は元気よくそう言う。
どうやら見ているだけではせっかくの二人の時間が勿体無いというように繋いだ手の腕を引っ張る。
「わかった、わかった」
軽くそう答え、新たな目的地へ歩き出す。
「そういえば健、バレンタインもうすぐだけど、どんなチョコが欲しい?」
甘えるようにみるその眼差しに、少し照れた風に頭を軽くかき、考える。
「そーだな。亜美菜がくれるチョコならなんだって美味しいだろうな」
「もしお店で買ったチョコでも?」
彼氏が言った答えに不満そうな顔をしながらそう尋ねる。
「まあ、手作りじゃなくても美味しいだろうな」
思っていた答えとだいぶ違ったようで頬を膨らませふてくされる。
その様子に慌てて弁解をしているうちに向かいから来た男と肩をぶつけつしまった。
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