そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
「東條さんは以前東條物産で働いていて、今の仕事に就くまでに色々苦労されたみたいですね。こないだの座談会でそんなこと言っておられましたけど」

スプーンを口に入れながらさりげなく東條さんの話に持っていってみる。

「うん、そうなんだ。営業でバリバリやってたんだけど自分の部下が担当していた店でやらかしちゃってね。その後始末も相当大変だったみたいだよ」

「部下がやらかしちゃったって?」

「ここだけの話だけど、部下とある店との交渉がうまくいかなくてね。部下に代わって大智が担当を代わった矢先、部下が店に逆恨みして店舗に火をつけたんだ」

思わず雑炊をすくいかけた手が止まる。

「火をつける?」

「いわゆる放火だよ。幸い、店が休みの日の犯行だったからその店の娘さんだったかな?彼女が怪我をしただけで皆無事だったみたいだけど。大智もそれで相当参ってた。そのこともあって東條物産から離れてアメリカに渡ったんだ」

店に放火?

まさか、まさかだよね。

その店の娘さんだけが怪我をしたって。

まるで、うちの店と同じだけれど。

体が熱くなってくる。

胸がドキドキしてきて、手が震えてきた。

「あれ?岩倉さん大丈夫?」

私の様子がおかしいことに気付いた柳本さんは私の顔をのぞき込む。

それって、それって東條物産の話だったの?

だから、東條さんはうちの店のあるT町をよく知ってたの?

そして、よく仕事で来ていたって言ってた?

全てのつじつまが合いすぎて、恐くなる。

「体が熱いみたいだ。雑炊は残してもいいからベッドで早めに横になった方がいい」

柳本さんの手が私の肩に触れ、私の手から雑炊の残ったお椀を外した。

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