そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
体中がドクンドクンと脈を打っている。

目をつむるとそれが余計に強く感じられた。

今まで家族の誰も教えてくれなかったけれど、うちの店を窮地に追いやり、祖父を未だに苦しめ、私に悪夢を見せるあの火は、東條物産の社員が招いたことだったんだ。

東條さんの一族が率いる世界の東條物産の。

信じられない。

私を実家に送ってくれた時も、東條さんは何も言わなかったけれど全て知ってたの?

今、こうして私を同居させてくれていることも、かつての部下の犯した罪を償うため?

私みたいな小娘を相手にするような立場の人じゃないのにしてくれるってことは、『鮮魚いわくら』の娘だから?

全てに納得がいってしまうことに、胸に鈍い痛みをもたらす。

納得いかないことが一つでも感じられることができたらいいのに。

あの優しい目も、強く抱きしめてくれた腕の強さも、私にこんなにも染みついてしまった。

例え叶わぬ相手だとわかっていても、どんどん惹かれていく私の気持ちはどうすればいいんだろう。

私、東條さんのことが好き。

こんなに誰かを好きになったことは・・・・・・きっとない。

涙が頬を伝い枕が濡れる。

この気持ちを抱いたまま、東條さんの顔なんかみれない。

私は、大きく深呼吸して布団を頭から被った。
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