そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
朝の日の光の香りは、とても清々しい。
 
東條さんに手を握られて海岸線をゆっくりと歩く。

「どうして、ここに?」

彼の横顔を見上げながら、ためらいがちに尋ねた。

「どうしてだろうね」

東條さんは海岸線から吹き上げる風で乱れた前髪を掻き上げる。

そして、海を眺めながら静かに言った。

「色んなことに疲れたからかな」

東條さんの手をきゅっと強く握り締める。

「でも、どうして私も一緒に?」

彼の視線が私に向けられるけれど、その目は感情を抑制しているようなこちらが簡単に推し量ることのできない目だった。

こんなこと、聞いてる私ってやっぱり浅はかなのかもしれない。

自分自身が恥ずかしくなってその目から視線を落とした時、東條さんの声が波の音と一緒に流れてきた。

「友梨に俺の全てを誰にも邪魔されない場所で伝えたかったから」

「全て?」

「以前、そのままになってたことも全部。友梨はずっと引っかかってるんだろう?どうして俺が友梨に近づいたのかってこと」

ドクン。

久しぶりにあの火の海を思いだし、胸が痛んだ。

ずっと聞きたくて聞きたくなかったことだ。

私の事をどう思ってるのか、きっとその全ての中に含まれるんだろう。

少しだけ笑って私は首を横に振った。

「聞くのは少し恐いです」

「恐くなったら、その恐さを俺が忘れさせてやるさ」

「どうやって?」

彼の顔を見上げた時、東條さんの顔がすっと降りて唇が塞がれた。

「こうやって」

彼はようやくいつものように意地悪な目をして少し口角を上げた。

顔が一気に熱くなる。こんな外でキスされるなんて!

慌てて周囲をキョロキョロ見渡すも、誰も私達の事を気にする人はいないようで安心する。

「ここは日本じゃない。そんなことくらいで一々気にするな」

「ほんとに意地悪ですね」

私はプイと口を尖らせて彼から顔を背けた。

「ああ、意地悪だよ。今さら何言ってるんだ。そんな俺に惹かれているくせに」

「なっ!」

カッと熱くなって彼の顔を見上げたら、再び彼の顔が近づいてくる。
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