そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
「友梨!運転手のレッドだ」

それなのに、平然とした顔で東條さんは私に車の方へ来るよう手招きしていた。

心の動揺を必死に抑え込んで車の方へ笑顔で向かい、レッドさんに挨拶をする。

レッドさんは20代半ばくらいだろうか。

金髪でこちらの日差しのせいか頬が真っ赤に日焼けしていた。優しそうな青い目が私の動揺をかき消すように笑っている。

そして、私達は彼の車に乗り込み、夕暮れに染まっていく空をぼんやりと眺めながら、土ボタルが見られる洞窟へと向かった。

さっきまで赤く染まっていた空が一気に暗くなっていく。

ゴールドコーストの夜は日本よりもずっと暗闇が深く、星の数は信じられないほどに多かった。

何度見ても感嘆の声しか出なかった夜空も、今は見上げる気持ちにならない。

この場所での最後の夜だというのに。

1時間ほど行ったところで車は停車した。

「いくぞ」

レッドさんに案内されて、草木が生い茂った山道に入っていく。

時々、真っ暗な森の中で何かがうごめく音、動物の鳴き声が聞こえてびくっと震えた。

そんな私の手を、東條さんはそっと握る。

温かくて大きな私の大好きな彼の手。

日本に帰ったら、そんな彼の手に触れることもできなくなるのかもしれない。

涙が出そうになるのを堪えて、必死に彼の手を握り締める。

しばらく行くと、森林にぽっかりと口を開けた洞窟の入り口が見えてきた。

「レッドはこの入り口で待っていてくれる。ここからは二人でいくから手を離すなよ」

洞窟の入り口でレッドさんは笑顔で私達に手を振っていた。


< 167 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop