そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
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翌日、慌てて切った電話を不満そうにしていた母にもう一度電話をかけた。

フランスへの一年留学研修のことを相談したら、あっけなく「たった一年でしょう。いい機会だからいってらっしゃい」なんて言われた。

きっと心配して引き留められるんじゃないかと思っていたのに拍子抜け。

引き留めてくれたら、もう少し悩む時間が持てたのに。

フランス行きの話はまたとないチャンスでもあるけれど、たった一人で国外に出るなんてこと初めてだったから正直不安もある。

でも、家族にも後押しされた以上、断る理由はなくなった。

ただ一つ気がかりなのは、私を嗅ぎ回っていた記者のことだけ。

フランス行きの春までに何かわかればいいんだけど。

久しぶりに一緒にとったランチの時間、香織にも正式にフランス行きを決めたことを報告した。

「えー、もう決めちゃったの?」

香織はフォークにパスタを巻き付けている最中の手を止め、顔を上げた。

「うん、早めに決めるように松原マネージャーからも言われてたし。だって行くのは春でしょう?色々と準備もあるんだって」

「春からって、来年の4月ってこと?ってことは、あとあと一緒にいられるのは5ヶ月もないじゃない!」

「大げさねぇ。フランスに行くのはたった一年だから、またすぐ戻ってくるよ。今生の別れみたいな顔しないで」

私は目を大きく開き潤ませている香織を見て笑った。

だけど、こんな風に寂しがってくれる人がそばにいてくれることが今はとても嬉しい。

家族には「いってらっしゃい」なんて言われたし。

もし、東條さんがそばにいたらフランス行きの事はなんて言うだろう。

きっと表情一つ変えず「行ってこい」って言いそうだな。

例えそんな突き放した言い方をしたって、私のフランス行きのことは彼に相談したかった。

彼の声も言葉も、いつだって私の不安を和らげてくれたから。





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