そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
17.二人の痛み
17.二人の痛み


タクシーがホテルに近づいてくる。

ここまで来たくせに、今さらながらドキドキし始める。

だって、久しぶりに会うんだもん。

ゴールドコーストであんなひどい別れ方して、そして電話でもそっけなくされた東條さんと。

「つきましたよ」

既にホテルの前で停車しているのに身動きとれずに黙っていた私に、タクシーの運転手がこちらを振り返り不機嫌そうに言った。

「はい、すみません。降ります」

私は慌ててタクシー代を払うと、タクシーを降りた。

そのホテルは都心から少し離れた場所にある高級タワーホテル。

ロビーに足を踏み入れると、萎縮してしまいそうなほど豪華できらびやか。

リュックを背負って、身軽な格好のまま出て来てしまったことに後悔する。

柳本さんから部屋番号を聞いていたから、フロントで呼び出してもらうことも可能だったけれど、まずはロビーのソファーに座り気持ちを落ち着けることにした。

来る時はあんなに意気込んでいたのに。

やっぱり私って頼りないよね。

結局肝心なところでいつも尻込みしちゃう。

こんなんじゃ東條さんの力になんてなれないよ。

リュックをお腹の上で抱えるようにして、柔らかいソファーに沈んだ。

「こんなところで何やってんだ」

その時、私の頭上で低音の声が響く。

声の方に顔を向けると、そこには東條さんが立っていて私をいつものようにクールな眼差しで見下ろしていた。

「東條さん」

いきなりの登場に呼吸するのも忘れて、口を開けたままその姿を見つめた。

会いたかったその人が目の前にいることがまだ信じられない。

「口開いたまんまだぞ」

東條さんはそう言うと、少し口もとを緩め私の正面のソファーに腰を下ろした。
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