そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
東條さんは私の緊張を悟ったのか、前を向いたまま膝の上の私の手をハンドルを持っていない方の手でぎゅっと握り締めた。

「昨晩、翼から電話があったよ」

「柳本さん?」

柳本さんも今回の山村さんの件が落ち着いたことを自分のことのように喜んでくれていた。

自分にも責任の一端があるとずっと自責の念に駆られていた柳本さんにとっても、この解決は人生における第二章のはじまりだと東條さんが言っていた。

東條さんと私にとっての第二章はいつになるんだろう。

「翼に今日のこと話したら、友梨はきっと緊張するだろうなと心配していたよ。俺がいる限り何も問題はないから心配ご無用だって言っておいた」

「本当にすごい自信ですよね。柳本さんの方が普通だと思いますけど」

私は彼の横顔に思わず噴き出す。

東條さんは口もとを緩めると、穏やかな声で言った。

「友梨と初めて出会ってからここまでくるのに長くかかったな」

初めて出会ったのはあの火の海の中。

まさか再会できるなんてことも思わなかった彼と今こうして実家に向かっていることは奇跡のようにも思える。

東條さんもきっと同じ気持ちなんだろう。

私の手が一層強く握り締められる。

「俺だって、これでも少しは緊張してるんだぜ。今まで人生の中でも身を正さなくちゃならない機会はいっぱいあったけれど今回は特別だ」

私は何も言わずその言葉に頷いた。

「人生最大級の失敗が許されない舞台に立たれてるような気持ちだ。友梨だけは俺の今持っている全てを失っても失いたくない存在だから」

彼の思いが握る熱い手から伝わってくる。

東條さんはもう笑ってはいなかった。

彼の言葉と表情から、私のために全てを賭けてここに来てくれたんだって信じられる。

私も緊張とは違う胸の高鳴りを感じていた。

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