そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
まさかこの部屋で女性の声がするなんて思ってもみなくて、驚きのあまりタオルを落としそうになる。

そして、ゆっくりと声の方に顔を向けた。

そこにはGM秘書の山村さんが手に紙袋を抱えて呆然と立っていた。

一度だけしか会ったことがなかったけれど、今日もバッチリメイクは健在で以前と違っていたのはさらに色気が増すような胸元が開いたゆるやかなワンピースを着ていたってこと。

「すみません!」

とにかく山村さんだということがわかって慌てて頭を下げる。

多分、彼女が手に持っているのは恐らくGMが頼んでいた私の着がえだよね。

「あの、着がえ持って来ていただいて申し訳ありません。洋服代は私お支払いしますので・・・・・・」

「あなたって、確かうちのオフィスによく来られてる方ですよね?」

山村さんの眉尻と濃いブルーのアイシャドウが入った大きな目は明らかにつり上がっていた。

その怒りが露わになった形相に一瞬怯むけれど、前に真知さんから山村さんがGMを狙ってるという話を聞いていたことを思い出す。

「あの、これには深い事情がありまして。全くご想像しているのと違いますから」

敢えてへラッと調子よく笑いながら、顔の前で手を横に振った。

それなのに、一層彼女の顔は紅潮していくのがわかる。

どうしよう!完全に誤解されてる!

GMに助けを求めたくても、こんな格好じゃ行けないし。

とにかくGM、早くこっち来て!
って、こっち来られて困るか・・・・・・なんて思っていたら。

「山村、わざわざ休日にすまなかったな」

嘘!GMの声が近づいてきた。

タオルで体を巻いた状態の私は、急なGMの登場に扉の奥に隠れるのも忘れてGMとしっかり正面から向き合う。

しばらくじっと目を合わせたまま動けない。

バクバク心臓が躍ってる。

それなのに、GMは表情一つ変えず言った。

「着がえはまだ?山村に脱衣所にその着がえ置いたらすぐ帰るよう伝えたんだがお前の方が早くシャワーが終わったってことだな」

そして、額に手をやると「ふぅー」と息を吐いて山村さんから紙袋を受け取り私に差し出した。

「とりあえず早く着がえろ。っていうか、そんな格好で俺の前に現れてもう少し恥じらいってもんはないのか?」

一気に顔が熱くなる。

そういうんじゃないのに!GMが急にこっちに来たからしょうがなかったのよ!

もう少しで喉元から出そうになった言葉を必死に堪え、GMから紙袋を受け取り頭を下げると扉をゆっくりと閉めた。



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