そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
祖父はカウンターの奥にある丸椅子にゆっくりと腰をかがめて座る。

カウンターの隅でそんな私達の様子を見守っていた祖母が慌てて祖父にお茶を淹れて手渡したた。

祖父はお茶を一口飲むと吐き捨てるように言った。

「それにしてもあの火事さえなけりゃ、誰にも迷惑をかけずにいられたものを」

「まぁまぁ、今はこうして皆さんのおかげでお店できてるんだからいいじゃないですか」

「しかしなぁ。わしはやっぱり許せない」

祖母は私にしてくれていたように、祖父の背中を笑顔でゆっくりとさすった。

火事の原因は、最近になって母が私に教えてくれたっけ。

************

当時、店は近郊ではその名を知らない人はいないほど有名で繁盛していた。
そんな中、店で出していた人気の魚の干物と自家製味噌汁を通販で売らないかと、ある大手商社から話が持ち上がる。

昔気質の祖父は全く耳を貸さず、若手の営業担当者に対してけんもほろろに突き放していたらしい。

営業担当者も毎日にのように頭を下げに来るも、まだ入社3年目の若手だったためか相手をうまく説得する術を持っているはずもなく、半年粘ったけれど最後まで祖父の気持ちを動かすことはできなかった。

店との交渉が失敗に終わったため、結局その直後彼は担当を変えられてしまう。

その彼が、店のことを恨み、腹いせに店の定休日を狙って放火を行ったのだった。
彼が高学歴で今までそんな扱いを受けたことがないプライドの高い人物だったということは後からわかった話で・・・・・・。






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