そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
8.バツ
8.バツ
扉の赤い『×』は、幸いチョークで書かれていたため、少し洗剤をつけた雑巾ですぐにふきとることができた。
跡形もなくきれいに消し去った扉を見る。
だけど、誰かが私を恨みながら『×』を書いている光景が勝手に頭に浮かんでくる。
その『×』は、消しても消してもまだどこかに残っているような気がした。
その夜、また誰かが玄関に『×』を書きにくるんじゃないかという不安に取り込まれてなかなか寝付けなかった。
不安な数日を過ごしていたけれど、あれ以来玄関の扉に『×』と書かれることはない。
毎晩玄関の前に立つたびにまた書かれてるんじゃないかって胸がドキドキざわついていた。
だけど、まだ誰にも相談していない。
相談することすら恐いような・・・・・・。誰を信じて話せばいいのかもわからなくなっていたから。
しばらく遠方に泊まりの出張で不在だった香織が久しぶりに出社した。
「おはよ!」
変わらず明るい声で香織はそばにやってきて、私の肩に自分の腕をかけると小さな声で尋ねる。
「柳本さん達とのお食事会どうだった?」
あ。そういえば、そうだった。
あの赤い『×』に気持ちが浸食されていて、あれからハピーオフィスにも出向いてない。
すぐにでもGMにお礼をと思っていたのに。
「ああ、うん。おいしいお食事いただいたよ」
私は香織に少しだけ笑って答えた。
「それだけ?」
「え、ああ、うん」
もちろんそれだけじゃなかったけれど、GMと同じ部屋に泊まっただなんて香織に口が裂けても言えない。
きっと今日一日離してもらえないだろうから。
「柳本さんには一緒に食事会してってお願いできた?」
「ごめん、結構あの日酔っ払っちゃって。でも、また今日もハピーオフィス行く用事があるから柳本さんに会えたら聞いてみるわ」
「えー、そうなの?私も一緒に行きたいけど、さすがに営業帰りで仕事が溜まってるから無理だわぁ。よろしく頼むわよ!私の運命の恋は友梨に架かってるんだから」
「またまた大げさなんだから」
脳天気な香織と話していたら、少しだけどんよりとした気持ちが晴れていった。
扉の赤い『×』は、幸いチョークで書かれていたため、少し洗剤をつけた雑巾ですぐにふきとることができた。
跡形もなくきれいに消し去った扉を見る。
だけど、誰かが私を恨みながら『×』を書いている光景が勝手に頭に浮かんでくる。
その『×』は、消しても消してもまだどこかに残っているような気がした。
その夜、また誰かが玄関に『×』を書きにくるんじゃないかという不安に取り込まれてなかなか寝付けなかった。
不安な数日を過ごしていたけれど、あれ以来玄関の扉に『×』と書かれることはない。
毎晩玄関の前に立つたびにまた書かれてるんじゃないかって胸がドキドキざわついていた。
だけど、まだ誰にも相談していない。
相談することすら恐いような・・・・・・。誰を信じて話せばいいのかもわからなくなっていたから。
しばらく遠方に泊まりの出張で不在だった香織が久しぶりに出社した。
「おはよ!」
変わらず明るい声で香織はそばにやってきて、私の肩に自分の腕をかけると小さな声で尋ねる。
「柳本さん達とのお食事会どうだった?」
あ。そういえば、そうだった。
あの赤い『×』に気持ちが浸食されていて、あれからハピーオフィスにも出向いてない。
すぐにでもGMにお礼をと思っていたのに。
「ああ、うん。おいしいお食事いただいたよ」
私は香織に少しだけ笑って答えた。
「それだけ?」
「え、ああ、うん」
もちろんそれだけじゃなかったけれど、GMと同じ部屋に泊まっただなんて香織に口が裂けても言えない。
きっと今日一日離してもらえないだろうから。
「柳本さんには一緒に食事会してってお願いできた?」
「ごめん、結構あの日酔っ払っちゃって。でも、また今日もハピーオフィス行く用事があるから柳本さんに会えたら聞いてみるわ」
「えー、そうなの?私も一緒に行きたいけど、さすがに営業帰りで仕事が溜まってるから無理だわぁ。よろしく頼むわよ!私の運命の恋は友梨に架かってるんだから」
「またまた大げさなんだから」
脳天気な香織と話していたら、少しだけどんよりとした気持ちが晴れていった。