最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
そう聞いたら、彼は小さく笑った。
「俺は撮影係。俺の存在すっかり忘れてただろ?」
慧の指摘に慌てて言い訳する。
「……ご、ごめんなさい。イルカをこんな近くで見たの初めてで……つい」
「ショックだなあ。俺はイルカに負けるのか」
わざと拗ねた振りをする彼。
「イルカが好きなのと慧を好きなのとは意味は違うよ」
一生懸命説明したら、彼は愛おしげに私を見て微笑んだ。
「わかってる」
ホッとして彼と見つめあっていたら、スタッフが遠慮がちに声をかけてきた。
「……あの~、私は次の作業がありまして、そろそろ終わりでいいですか?」
わ〜、今度はスタッフの存在忘れてたよ〜。
きゃあ〜、恥ずかしい。
私は狼狽えまくりだが、慧は平然とした顔でスタッフに礼を言う。
「見せて頂いてありがとうございました」
その対応を見て思った。
何事にも動じない彼の心臓はきっと鋼で出来ているに違いない。
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