最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
「……一睡も出来なかったな」
ポツリと呟く私の目には全てが灰色に見える。
慧と見ていた綺麗な世界は、私にはもう見ることが出来ないのだ。
慧とキスして抱き締めてもらうことも……もうない。
彼との記憶を消せたらどんなにいいだろう。
そうすれば、こんな辛い思いをしなくて済むのにな。
フーッと息を吐くと、ベッドを出て服に着替える。
軽く化粧を済ませ、食事も取らずにまたスマホを眺めた。
今彼に何かメッセージを送れば、すぐに連絡がきてしまうかもしれない。
時刻は七時過ぎ。
彼からの連絡が怖い。
私が今【別れよう】ってメッセージを打って、慧が【わかった】って返事して来たら、私達は本当に終わってしまう。
ひょっとしたら、私が見ていない彼からのメッセージに、別れの言葉が書かれているかもしれない。
それを見る勇気がない弱い自分。
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