最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
グシャッと髪をかき上げると、不意に棚の上に置いてあるくまのぬいぐるみが目に映った。
それは、昔私を助けてくれたお兄さんがくれたぬいぐるみ。名前はモモ。
「モモ、私……どうしたらいい」
ぬいぐるみを手に取り、ギュッと胸に抱き締める。
今の私をお兄さんが見たらなんて言うだろう。
「"しっかりしろ"って怒るかな?」
頑張れ、香澄。
失恋している人なんて世の中にはたくさんいる。
私だけが苦しいんじゃない。
恋人と別れてもそれで人生は終わらない。
お兄さん、私に前を歩く勇気を下さいーーー。
しばらくぬいぐるみを抱き締めると、また元の場所に戻した。
「行ってきます」
ぬいぐるみを見てそう告げると、バッグを持ってアパートを出た。
電車に乗って出勤すると、いつものように私が一番乗りで、ドアを開けてすぐに立ち止まった。
「ここで働くのもあとちょっとなんだね」
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