最愛～一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました～

それは外線で、かけてきたのは兄だった。
「香澄？拓人だ。お前の携帯にかけても出なかったから」
張り詰めたその声。
嫌な予感がした。
こんな時間にかけてくるってことは何かあったからに違いない。
「ごめんなさい。スマホの電源を切っていて。今日はどうしたんですか？」
兄に謝りながらも緊張しながら用件を聞く。
「親父が事故に遭った。自分で車運転しててガードレール飛び越えて……川に車ごと落ちたんだ。今うちの病院で手術中だが、内臓破裂で状態がひどくて……助からないかもしれない」
兄は取り乱した様子で私に伝える。
え？
兄の話がすぐに頭に入って来なかった。
お父さんが事故に遭った？
助からないかもしれない？
う……そ。
「……澄、香澄」
兄に名前を呼ばれてハッとする。
「ごめんなさい。驚いてしまって……」
額に手を当てて話す私に兄は切羽詰まった声で頼んだ。