最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
「仕事もあると思うがこっちに来てくれないか?」
「……わかりました。すぐに帰ります」
もう過去がどうのとか言っている場合じゃない。
父の命が危ない。
意を決してそう答えると、兄は優しく言った。
「気をつけて帰っておいで」
初めて兄の優しさに触れたような気がする。
「……うん」
敬語を使わずに返事をして、静かに受話器を置いた。
「どうしたんですか?」
心配そうに私の顔を覗き込む水沢さんに、父のことを伝える。
「父が交通事故に遭って……危ないらしいの」
なるべく気を落ち着かせようとするも震える声。
ハーッと息を吸って続ける。
「すぐに帰らなきゃ。ひょっとしたら一週間かそれ以上会社休むかもしれない」
笑って見せたが、水沢さんは突然私を抱き締めて言った。
「無理して笑わないで下さい。仕事のことは心配しなくていいです。部長のサポートも東雲さんが戻るまで私がしっかりやりますから」
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