最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
その柔らかくて温かな抱擁に、つい気が緩んでしまい涙が溢れた。
「……水沢さん、ありがとう」
涙ぐみながら礼を言うと、彼女は私の目を見て励ます。
「お父さん、助かるといいですね。東雲さんも気を強く持って」
「うん。水沢さんがいるから安心して行ける」
涙を拭いながらそう言うと、彼女はフッと口元に笑みを浮かべた。
「それは指導係が優秀だからです。私に仕事を教えてくれたのは、東雲さんですよ。今タクシー呼ぶんで車で行って下さい。焦って怪我でもされたら困ります」
私にそう言いながら、彼女は抱擁を解いて電話をかける。
兄の電話を受けたのが彼女がいる時でよかった。
もしひとりでいる時に聞いていたら、気が動転して何も考えられなかったかもしれない。
「タクシー五分で着きます。お財布とスマホちゃんと持ってますか?」
冷静な彼女は私に確かめる。
改めて訊ねられると自信がない。
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