最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
「……そんなに時間がかかるんですね。ここには私がいますから、拓人さんは一度家に帰ってはどうですか?昨日夜勤だったのでしょう?」
疲れて見える兄が心配でそう言えば、彼は少し口元を緩めた。
「ありがとう。父さんが運ばれてきたのが夜勤明けでね。医局にシャワールームがあるから、ちょっと身なりを整えてくるよ」
兄の言葉にコクッと頷くと、手術中の表示をじっと眺めた。
看護師が慌ただしく出入りしているのを目にすると、容態が急変したのでは?とハラハラしてしまう。
今私にできる事といったら、ここでじっと待って、父が命を取り留めるのを祈るしかないのだ。
それだけなのに、精神的にかなり疲れてくる。
ここに来て一時間ほど経っただろうか。
兄がレジ袋を手に戻って来た。
まだ顔色は悪いが、ひげを剃ってさっぱりした顔をしている。
「これ」と言って持っていたレジ袋を差し出す兄。
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