最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
"肝臓は半分切除した"という言葉が聞こえてきて、身体が思わず強張った。
看護師が去っていくと、兄は私に目を向けた。
「肝臓を半分残せたから、希望が持てるかもしれない」
「半分も切ったのに大丈夫なの?」
「他の損傷具合にもよるが、肝臓はいくらか残っていれば再生可能だから」
それからまたじっと椅子に座り続けて、手術が終わったのが午後八時過ぎ。
手術室からストレッチャーに乗った父が運ばれてくる。
当然だけど意識はなく、気管にチューブを入れられていて、その姿は痛々しい。
久々に会うせいか、父の頭には白髪が混じっていて、父も年を取ったんだと思った。
兄が担当の医師と話をすると、その表情が和らいだ。
「ありがとう」と兄が担当医師の背中をポンと叩く。
そんな兄をじっと見ていたら、彼は私を見て安堵した顔で言った。
「まだ予断は許さないが、とりあえず一命は取り留めた」
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