最愛～一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました～

父のことでそれがよくわかったはずじゃないか。
もっとよく考えなくては……。
そう決意する私にまた水沢さんがメールを寄越した。
【考えなくていいです。連絡しなさい！】
その命令文を見て呆気に取られる。
まるでこの場に彼女がいて怒られているように感じた。
「どうした、香澄？会社で何かあった？」
「いいえ。会社の後輩が心配してメールをくれたんです」
小さく笑って否定すると、兄はホッとしたようだった。
これは彼女の愛のムチだ。
人付き合いは苦手だけど、水沢さんのようないい子に出会えてよかった。
【わかった】と彼女にメールすると、ちょうど食事が運ばれて来て、兄と食べ物の好き嫌いの話とか、兄が医学生だった頃の話とか……父の事故とは関係のないどうでもいい話をしながら食べた。
私達兄妹にはお互いを少しでも知るために、それと緊張の疲れを癒やすために必要なことだったんだと思う。