最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~

5、お兄さんとの思い出

『もう暗いけど帰らないの?家の人が心配するよ』
知らないお兄さんが公園のベンチに座っている私に話しかける。
『……いいの』
私を待っている人なんてうちには誰もいない。
帰っても家は真っ暗だ。
じっと自分の手を見たまま答えた。
それで、そのお兄さんは帰るかと思ったのに、驚いたことに私の横に座った。
『でも、女の子が公園にひとりって危ないよ』
『……いいの』
また自分の手を見て答える。
どうなったっていいのだ。
だから、毎日公園に来て待っている。
誰かが私に罰を下すのを。
私のせいでお母さんは亡くなった。
父や兄にとって、私は忌むべき存在。
この世からいなくなった方がいい。
まだ帰ろうとしないお兄さんをチラリと見た。
年は十五、六くらいだろうか?
うちの兄と同じくらいに見える。
黒髪で、背は百七十くらい。
ジーンズに黒のジャケットを来ていた。
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