最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
手足をバタバタさせて叫ぼうとしたら、マスクをした五十くらいのおじさんがナイフを取り出して、胸に痛みが走った。
『暴れるな』
キラリと暗闇の中光るナイフ。
それでもう駄目だと思ったが、中学生くらいのお兄さんが三人現れた。
『おい!何をやってるんだ!』
ひとりのお兄さんが叫んで、私を襲っていたおじさんはその声に反応して振り返る。
お兄さんたちが駆け寄って来て、マスクの男を取り押さえた。
それは、一瞬の出来事だった。
三人のうちひとりが私をそっと抱き起こした。
『もう大丈夫だから。信人、救急車と警察!』
それは、昨日会ったお兄さんだった。
『ごめん。ちょっと胸にハンカチ当てるよ。痛いよね。すぐに救急車来るから』
彼が胸にハンカチを当てて初めてマスクの男に切られたんだと気づいた。
私の胸には真っ赤な血がベットリとついている。
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