最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
それで、さっきマスクの男が持っていたナイフのことを思い出した。
怖くて身体がブルブルと震えると同時に急に傷の痛みが襲って来て……。
すると、昨日会ったお兄さんが私の肩を抱き寄せた。
『もう怖くないよ。傷も病院に行けばすぐに手当てしてもらえるからね」
その温もりにどんなに安心したか。
お兄さんは救急車に乗る時もついてきてくれて、次の日も病院にお見舞いに来てくれた。
私が入院しているのは父が経営している総合病院。
腕のいい先生もいるし、施設も整っていて県下にその名をよく知られている。
怪我は七針縫ったらしいが、血は止まって少し痛みがある程度。
病院の屋上に一緒に行って、ベンチに座り、彼と話をした。
『傷、痛くない?』
お兄さんは心配そうに私の顔を覗き込んだ。
『……大丈夫』
いつものように愛想なく答えて、"しまった"と思った。
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