最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
何を不謹慎なこと考えてるの?
ここで慧を見つめていては、彼が言わなくても周囲に私達のことがバレる。
「ほら、もう始業時間になったよ」
自分の気持ちを誤魔化すようにして、平静を装って田辺君を注意すると、パソコン画面に目を向けた。
さっとメールのヘッダーを見ていたら、ポケットに入れておいたスマホがブルブルと震える。
取り出して見ると、兄からのメール。
"兄"という表示を見て、身体が強張った。
それは、まるで呪いのようだ。
私を暗い闇の世界に突き落とす。
そのまま無視しようかとも思ったが、思い切ってメールを開いた。
【上京しているんだが、今日会えないか?】
会って何を話すと言うのだろう。
大学進学のために上京して以来、実家には一度も帰っていない。
盆も、正月も東京でひとりで過ごしている。
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