最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
それで父も兄もこの十一年何も言ってこなかったのに、なぜ今頃になって連絡して来るのか。
私の顔を見るのも嫌だろうに。
返事を出さずに、スマホをポケットにしまい、スケジュール帳を持って慧のデスクに行く。
「顔色が悪い。何かあったのか?」
彼が私を気遣うように見る。
あまりに鋭くてハッとした。
私の些細な異変に気づくなんて……。
「朝寝坊してしまって、慌てて出勤したもので」
苦笑しながら、当たり障りのない言い訳をする。
彼に本当のことは言えなかった。
余計な心配はかけたくない。
それから慧を会議に送り出して、打合せのアレンジやメールの処理、資料の取り纏めであっという間にお昼になった。
コンビニに何か買いに行こうと席を立ったら、外線が鳴って水沢さんが電話に出た。
少し気になってとどまっていたら、彼女が私に目を向ける。
「はい、今代わりますので、お待ち下さい。東雲さん、お兄さんからです」
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