最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
う……そ。
まさか会社にかけて来るなんて思わなかった。
「ありがとう」と水沢さんに言いながら、電話を代わる。
「……もしもし」
躊躇いながら電話に出ると、兄の声がした。
『香澄?お前の会社の近くにいるんだ。今お昼なら会えないか?』
私の記憶より低いその声。
え?会社の近く?
出勤しているのはわかっているのだし、断ろうにも断われない。もう覚悟を決めるしかない。
「あの……うちの会社のビルの道路挟んで反対側に『ビアンカ』というイタリアンのお店があるんです。そこで待っていてもらえますか?」
混乱する頭で考えながらそう伝えると、兄は『わかった』と返事をして電話を切った。
「東雲さん、お兄さんがいたんですね」
水沢さんに言われ、顔を強張らせながら頷いた。
「うん。そうなの。ちょっと外に食事に行ってくる」
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