最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
バッグを持ってオフィスを出ると、急いで私が指定した店に向かった。
会って何を話せばいいのだろう。
会うのが怖い。
兄の不意打ちの訪問に頭の中はぐちゃぐちゃ。
今年の一月にオープンしたオシャレなお店の前まで来ると、乱れた前髪をサッと整えて中に入った。
お店は外観も内装も白を基調としていて、店内の壁には色鮮やかな皿がところどころに飾られている。
視線を彷徨わせて兄の姿を探すと、「香澄!」と声がした。
声の方に目を向ければ、兄が手をあげている。
もうここまで来たら逃げるな。
心の中でそう呟いて、兄のいるテーブルに行くと、横の椅子にバッグを置いて兄の向かい側の席に座った。
「お待たせしてごめんなさい」
兄の目を見て頭を下げれば、兄も「急に呼び出してすまない。こっちで学会があったものだから」と謝る。
兄はうちの病院を継ぐために医者になった。
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