隠れたがりな君には、明け透けな愛を。ー番外編追加しましたー
車のドアを開けて出てきた湊人が驚いた顔のまま私に言う。
「……莉子?」
「莉子だよ」
そう無愛想に答え、湊人がドアを開けてくれたのに順って助手席に座った。
こうやって湊人の運転する車の助手席に座るのは、大学生の頃以来だ。
ふと、今では自分にとって気まずい存在になってしまった男の横顔を眺めてそんなことを思う。
「一瞬誰だか分からなかった」
「…男装したから」
「さすが、
芸能人の姉は変装が抜かりないな」
そう言って湊人が小さく笑う。そういう湊人は、テレビで見るままの"及川湊人"だ。
いくら夜と言えど、この男は目立つ。それに加えて私の見た目はあの西条梨架なのだ。
何かあった時の事を考えれば、こうするのが一番だろう。