隠れたがりな君には、明け透けな愛を。ー番外編追加しましたー
どうにか必死に冷静になってそう返すと、莉子が力なく首を横に振った。
「莉子、最後に一つ聞いてもいい?」
「うん」
「莉子の好きな人って、どんな人?」
馬鹿か俺は。
そんな事聞いてどうすんだ。
わかっているのに、見えないその誰かに嫉妬して仕方がないのに、そう聞かずにはいられなかった。
「どんな人…って聞かれても、難しいけど」
莉子はそう前置いて続けた。
「優しい人…かな。私の中身とか、私自身の事を見てくれる人なの」
そう答える莉子の声は穏やかで澄んでいて。
心臓が抉られるような痛みを感じながらハンドルを回す。
「素敵な人みたいで良かった。
上手くいくといいな」
上手くいくといい。口から自然に溢れた言葉は嘘ではなく本心だった。
幸せになって欲しい、莉子には。
俺が幸せにしてやれなかった分、莉子を幸せにして欲しい。笑顔にしてやって欲しい。
多分この先、
まだ俺はこの気持ちを引きずるんだろう。
莉子とは結ばれない運命だったのだとわかってはいても、後悔ばかりが募る恋だ。
一度は付き合っていたことがあるから余計に。
───私の初恋は湊人だよ。
いつか聞いた莉子の言葉が、こんな時に蘇る。
これだけ好きな人の初恋は俺で、
俺達には確かに想い合っていた時間があって。
それだけでもう、何だか報われるような気がした。