隠れたがりな君には、明け透けな愛を。ー番外編追加しましたー

慌てて前髪でまた隠そうとしても、髪が濡れているせいで上手くいかない…というか前髪が束になっていて無理だ。

サーッと血の気が引いて、気がつけば手に持っていたタオルが手からこぼれ落ちていた。

しまったと思い、
落としてしまったタオルを拾おうと拾おうと屈んで手を伸ばした時。

「わぁっ!?」

靴が濡れていたからか気が動転していたからか、そのまま足を滑らせて床に倒れこんだ。

………本っ当に、何やってるの、私!

恥ずかしさやら情けなさで俯いて固まる私を見て、
石川部長が何やってんだと言って小さく笑う。

「落ち着け。大丈夫か?」

優しくそう言って、石川部長が足を折って屈む。俯いていた顔を上げると至近距離で石川部長と目が合い、思わずドキッと心臓が跳ねた。

「あ…悪い」

石川部長がそう言って視線を外しながら腰が抜けたように床にへたりこんでいた私に手を差し伸べてくれて、その手をおずおずと掴んで立ち上がった。
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