隠れたがりな君には、明け透けな愛を。ー番外編追加しましたー
「…なんでそう危なっかしいんだ」
「ご、ごめんなさい…っ」
冷静に考えたら、別に脚立の上にのったあの状況で石川部長に声をかける必要は無かった。お礼を言う機会なんて、同じ部で働いていたらいくらだってあるのに。
あまつさえ、またこんな風に石川部長に迷惑をかけるなんて。
…脚立の上でバランスを崩すなんて、子供でもないのにそんな。
しかもあんな低い脚立で。
あんまりいたたまれなくなって唇をギリっと噛んで俯くように頭を下げると、石川部長の手が私の頭にポンっと優しく乗った。
驚いて顔を上げると、石川部長がどこか困ったような顔でクスッと笑った。
「別に責めてる訳じゃなくて…ただいつも仕事出来てしっかりしてるイメージだったから驚いた。意外と抜けてるんだな」
「抜けてなんか…」
否定しようとする声が情けなく尻すぼむ。
昨日の出来事の成り行きを石川部長は知らない訳だし、今転げ落ちそうになったのも事実だし…。
今まで誰にも抜けているなんて事を言われた事は無かったが、こんな状況では石川部長にそう思われても仕方がないなと内心で肩を落とした。
変な髪型で、愛想もなくて、あまつさえ抜けている部下って…。