隠れたがりな君には、明け透けな愛を。ー番外編追加しましたー
「…久しぶり。それで、どうしてここに?」
回れ右してしまいそうな足をどうにか留め、
強張った声で尋ねる。
というかこんな風貌の私をよく西野莉子だと判断出来たものだ。
「どうしてって、舞台稽古。梨架から聞いてないのか、一応相手役なんだけど」
相手役って…。梨架は主役なんだから、大きな役だという事だ。
俳優業を始めてまだ間もない筈なのに、こんなにすぐ梨架と同じ舞台に立てて、しかも相手役を演じるなんて、結構凄い。
認めたくないけど。
「そう、大好きな梨架の相手役になれて良かったね」
少し皮肉を込めてそう返す。
「は?どういう事だよ」
「わざわざとぼけてくれなくていい。
もしかして梨架を追いかけて芸能界に?」
「…お前、まだそんな事言ってんの」
そう言う湊人の声は明らかに苛立っている。
訳がわからない。
私がまるで聞き分けの悪い子供みたいな言い方。
…そもそもどうして私が苛立たれなきゃいけないの。
らしくもなく頭にカーっと血が上った時だった。
「お姉ちゃんっ…!」
息を切らしながら走ってきた梨架に名前を呼ばれてハッとした。
「迎えに来てくれてありがとう。その…」
梨架が気まづそうに目を反らしながら崩れた前髪をいじる。