隠れたがりな君には、明け透けな愛を。ー番外編追加しましたー
「お疲れ様。早く帰ろう」
…切実に早く帰りたい。
そう言って梨架の腕をつかもうとした私の右手は、気づけば湊人に捕らえられていた。
「待てよ、話がある」
梨架が遠慮がちに退こうとするのが分かった。
…冗談じゃない。
「嫌だ」
「嫌って…
またそうやって俺から逃げんのか」
またって何。
逃げるって何。
苛立ちながら、
目の前のその端整な顔を睨みつける。
「逃げるも何も、今更話す事なんて無い」
そう言い放って掴まれていた手を強く振りほどくと、困ったような泣きそうな顔をした梨架の腕を強引に引いてその場を離れた。
「ごめんねお姉ちゃん、舞台の事黙ってて」
車内で、申し訳なさそうに梨架がそう切り出した。
「謝るような事じゃないよ。とにかく舞台の主演なんて凄いよ、おめでとう」
そう返すと、梨架が嬉しそうな顔をしてありがとうと微笑んだ。