独占欲強めな同期の極甘な求愛
「はい、完成」
昔のことを思い返していたところに藤田さんの声が耳に届く。
「美麗ちゃん、綺麗よ」
そう言われ鏡に視線を向けると、そこには見たこともない自分が写っていた。
「……嘘、自分じゃないみたい」
「満足してくれたかしら?」
「はい、とっても」
自然と笑顔に変わっていた顔を向けそう言うと、藤田さんは私の目線まで体をかがめ、こう口にした。
「どうして急に変わりたいと思ったのかはわからないけど、美麗ちゃんの力になれて嬉しい。頑張ってね」
「藤田さん……」
優しい声色に胸が熱くなる。藤田さんにはよく、たまには髪型変えてみたら? と言われていて、その都度断ってきた。頑なな私に呆れていただろう。だけど今はまるで自分のことのように喜んでくれていて、素直に嬉しくなる。ここに通っていてよかった。藤田さんに出会えてよかった。
「またね、美麗ちゃん」
「はい。ありがとうございました」
藤田さんに見送られ、お店を後にする。今度来るときは失恋していると思う。だけどもう逃げないと決めた。家路に向かう足はいつになく軽やかだった。