独占欲強めな同期の極甘な求愛
「それってさ、もしかして好きな奴のため?」
そんな私に臣が不機嫌そうな声で呟いた。
「え?」
「そいつのために綺麗になったってことだろ?」
「あ……えと、うん」
本当は臣のためだって言いたい。だけど告白するなら水曜日家に来た時と密かに決めていた。だから今はまだ誤魔化すしかない。
「誰なんだよ、その好きな奴って」
しどろもどろになる私に、臣が苛立ったようにに言った。
「そ、それは……」
「俺には言えないような奴なの?」
「そういうわけじゃないけど」
困った、どうしよう。こんな風に悩んでいる間にも臣はどんどん不機嫌になっていく。
「あ、いたいた。都倉くーん!」
そんな私に助け船を出すように、どこからか甲高い声が届いた。顔を上げるとそこには小走りで駆け寄ってくる女の子。あ、この前駅で私のことを話していた子だと思った。
「なにしてるんですか、こんなところで」
「昼飯食ってた」
臣はスッと私から距離をとると中庭を出ていく。女の子はそんな臣と合流するとすぐ、腕をがっちりと掴んでいた。一瞬私の方を見て睨んでいたのも見逃さなかった。
「会議始まっちゃいますよ」
「あーそうだった」
「そいうえば私が焼いてきたクッキー食べてくれました?」
遠ざかっていく二人の会話に耳が集中する。クッキーかぁ。臣は好きじゃないんだよな。昔からよく女の子から手作りクッキーをもらうみたいだけど、その度に私のところへ流れてきていた。みんな手が込んだものを作っていて、中には手紙が入っていたり。
「あー、食ったよ」
嘘ばっかり。調子がいいんだから。と心の中で突っ込む。