独占欲強めな同期の極甘な求愛

「本当ですか! 嬉しい! また作ってきますね!」

張り切る女の子に、臣はそれ以上何も言わなかった。だけど心の中の溜息が今にも聞こえてきそうだった。

みんな臣の気を引こうと必死なんだろう。あの子だってこの前駅で話していた感じと全然違う。媚びているのが丸わかりだ。

もしかすると臣は一日中ああやって女の子に付きまとわれているのかもしれない。それから逃げるために昼をここでとっていたのかも。ちょっと同情する。モテ男も大変だ。

するとポケットに入れていたスマホが鳴った。見てみると臣からのラインだった。

“あとで話そう。仕事終わったら会社の外で待ってる”

「え……」

話そうって、これ以上なにを? また問い詰めてくる気? どうしようとその場で困惑していると、臣がこっちを振り返って見ているのに気が付いた。そしてちょっと怖い顔で、絶対帰るなよと口をパクつかせていた。

もう誤魔化せない。私の失恋日は今日になる。そう直感すると、喉の奥が小さく鳴った。


< 122 / 138 >

この作品をシェア

pagetop